国内縫製工場が取り組むべき次世代縫製工場への一手
先日、国内の縫製工場を見学する機会を頂きました。
福井県 勝山市にあるラコームという企業で、国内の有名アパレルブランドの商品を手掛けています。
安定した高品質はもちろんのこと、それを生み出す企業努力は大変勉強になりました。
さらに、低迷する国内繊維産業を打破するべく次世代縫製工場への取り組みにとても感銘を受けました。
今日はその内容を一部を紹介しようと思います。
衰退の一途を辿る国内繊維産業の今
先ず国内繊維産業の現状を知っておきましょう。
90年代当初、アパレルの国内生産比率は50%を占めていました。
それが現在、2017年の国内生産比率3%にまで低下。
バブルが終わり物価が下がっていく中でローコストを求めて、アパレルメーカー各社は生産拠点を国内から海外へと移していきました。
さらに、ユニクロ・GUや海外ファストファッションの台頭によりアパレル市場の流通量そのものが激増しました。
結果、国内生産量は激減、海外からの輸入は激増というダブルパンチが国内生産比率を一気に下げてしまう要因となったのです。
国内で流通している服の半分以上が国内生産だったというのが信じがたい状況ですね。
国内繊維産業の非効率さが仇となる
上記のような国内生産比率の激減により、国内繊維産業は衰退し続けています。
それに伴い国内の繊維関係の事業所も減少の一途を辿っており、90年代当初に比べると4分の1にまで減少。
こうした裏には国内繊維産業のとある事情が要因となっています。
その事情とは、細か過ぎて非効率過ぎる分業制です。
例えば、
・糸を作る事業者
・糸を生地にする事業者
・生地を加工する事業者
・生地を染色する事業者
・生地を販売する事業者
・生地検査する事業者
・パターンをひく事業者
・裁断~縫製する事業者
・副資材を扱う事業者
・仕上げ加工する事業者
・検品する事業者
・これらを仲介する搾取業者
などなど
正直把握してないだけでまだまだ分業されてる箇所はあるはずです。
これらをすべて仲介してくるわけですから、1着の服を作るのにも様々なコストが加算されてしまいます。
なぜここまで細かい分業制になったのかは分かりませんが、繊維産業の古い習慣として今なお蔓延っています。
この古い習慣を捨てきれないが故に商品単価を引き上げ、さらに生産ロット数をも引き上げてしまうという悪循環に。。
更に言うと、古い習慣から脱却しようと動き出した優秀な人材はどんどん大手のグローバルアパレル企業に引く抜かれていくという。。
これでは衰退の一途を辿ってしまうのも無理はありません。
以上が国内繊維産業の今です。
福井県勝山市 ラコーム社の次世代縫製工場への取り組み
さて、前置きが長くなりましたね。
衰退の一途をただただ黙っているほど日本の商人魂は腐っていません。
先日訪れた福井県勝山市にある縫製工場のラコーム社では、これまでの縫製工場の垣根を越えた提案型の縫製工場を目指しているそうです。
依頼された生地をただ縫製するだけじゃない
依頼された生地を縫製していると、どうても縫製側でしかわからないデメリットが見つかってくるそうです。
例えば、一定の温度になるとシワになろうとする生地がったり、縮もうとする生地があったり。
服として生産、使用した時にどんなデメリットがあるかを自社で検証し、生地屋さんが把握しきれていないデメリットをしっかりと把握します。
その結果クレームを事前に防いだり、以降の改善案となるようにサプライヤーやメーカーに提案します。
依頼されたパターンをただ裁断するだけじゃない
服の良し悪しを決めるのは何だと思いますか?
お店に陳列されている時は生地や縫製が目に付くでしょう。実際に着用した時は、生地や縫製よりもシルエットが目に付きます。
ぱっと見で印象の良し悪しを決めるのは素材や縫製ではなく、シルエットということですね。
シルエットの良し悪しを決めるのはパターンと呼ばれる型紙です。
パターンをセオリー通りに引くだけなら少し経験を積むだけで誰でも出来るでしょう。
しかし着る人の体型や生地の特性によってある部分に着用じわができてしまったりします。
これを解消するのは自社におけるデータの蓄積と研究であり、自ら提案しようとする文化がなければ成し得ないことです。
古い習慣からの脱却
現状の国内生産のボトルネックとなっているのがコスト高と生産ロットです。
これまでの川上から川下までの複雑なルートを簡略化し、本当に必要な事業者だけで服作りをすればコストもロットもグッと下がるはずです。
これを実現するのはなかなか難しいことではありますが、誰かが始めないと共倒れしかねません。
ラコームさんは地域で一丸となって服作りをすれば、古い習慣からの脱却も可能なはずと仰っていました。
是非それを実現させて国内繊維産業を復興させる新しい習慣を生み出して欲しいですね!
常に学び続ける姿勢
今回紹介したラコームさんの取り組みはまだまだ始まったばかりです。
自ら提案しよう、自ら変えていこうという文化がなければ誰も新しいことを学ぼうとはしないはずです。
ラコームさんの社内にはそうした文化がしっかり根付いているのだと思います。
この度は貴重なお時間を頂きありがとうございました。とても勉強になりました!
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